住宅に関わる【民法】についての話

今回は建築基準法からは少し離れて【民法】の話をしたいと思います。


民法と言われると近隣トラブルや民事裁判などマイナスなイメージを持ってしまう法律ですよね。
一見、建築とは関係がなさそうですが、これがめちゃくちゃ関係アリアリです。


建築における問題でも近隣トラブルは僕たち建設業者が一番困る問題です。

例えば、
新築建物による日照問題。
窓ガラス位置によるプライバシー障害。
越境問題など。


経験上、当事者(建設業者と施主様)同士の問題以上に、近隣トラブルが一番解決に向かいにくいです。


そもそも、建築の契約書にも挟み込まれていますが、近隣トラブルは施主様が主体となって解決してもらわなければなりません。


誤解を恐れず言うのなら、施主様とご近所さんとの問題であり、あくまで建設会社は中間の立場です。
今後、お施主さんが暮らしていくご近所付き合いもありますし、あまり建設会社が間に入ることにも抵抗があります。(まぁ実際にはそうはならずに、僕たちが調整役に回るのですが。。)

実は建築基準法上は隣地との距離がどれだけ近くても確認申請は許可されます。(耐火構造であれば隣の家に接して建てても良いという法律もあるくらいです。)
ですが民法では隣地からの距離の規定がしっかり記載されています。

とは言え民法に抵触する項目でも隣家の承諾をもらえれば建築可能です。


このように民法とは、絶対的な禁止事項という事ではなく不当な建築から隣家を守るためのものと認識して良いと思います。
言い換えれば隣家の方が不服申し立てをした時にのみ、この効力が発揮されるものです。


よって民法は、禁止事項ではなく、配慮の問題と考えた方がよさそうです。


今回は建築に関わる代表的な2項目を紹介します。

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隣地との距離 500mm【民法234条】

これは一般の方でも知っている有名な条文です。


簡単に言えば、隣地から50センチは離して家を建てなさいよ。という法律。


しかしながら、狭小地や昔ながらの集落では50センチさえ確保できない実状があったりしますので、一概に禁止とはなりません。


先述の通り、こちらについては隣地承諾をもらえれば問題はありませんし、大体50センチを切ってしか建築できない土地は隣地もそのような土地条件であることが多いので、お互い様という事でトラブルになるケースは少なかったりします。

ここでポイントは建築が着手から一年以上経過したり、完成してしまっている場合は、建築を変更させることはできないという事。(逆にその期間内ならば建築の変更を求めることができます。)

この期間以降は損害賠償のみになります。

まぁタチの悪い人が後からイチャモンを付けて建築変更させるなんてことも出来てしまう法律ですから、期限付きになっているという事で覚えておきましょう。

目隠しの配慮 1000mm【民法235条】

こちらについては、実は僕も経験済みです。


境界線から1メートル以内の隣地を見渡せる窓やベランダには目隠しを付けましょう。という法律。


僕がまだまだ経験が浅かった時のことです。
建築現場の北隣の方から連絡を頂き、新築から自分たちの家が丸見えで配慮が足りないというクレームを頂きました。


正直この家は敷地も広く、隣地から1メートル以上離れていたのですが、配慮不足だと言われてしまえばそれまで。

結果として会社とお施主さんが両者で負担して目隠しを取り付けたという着地になりました。
建築士として、周りの環境を読み解けていなかったと反省した次第です。

まとめ

以上のように建築中に民法の問題が出てくるタイミングは、往々にして近隣トラブルの時くらいです。

僕たち建築士は、「お客さんが良いといったから」という安易な考えを捨てなければなりませんね。


住宅とは建築業界の中では比較的小さい規模のものですが、少なからず街を作っている側面もあるでしょうから、この辺りは我々の使命(責任)なのでしょう。


似たような事例で、エアコンの位置についても近隣トラブルになる可能性がありますので注意しましょう。

エアコン室外機の位置についての注意点をまとめたので、こちらも覗いてみて下さい。


最後まで読んで頂きありがとうございます。それではまた。

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