構造家 梅沢良三 【建築本レビュー】

今回紹介するのは、構造家として多数の賞を受賞されている梅沢良三さんの本です。


ハウスメーカー設計の僕が何故こんな構造の本を読むのかと言うと、僕がマジで構造設計者に転職しようと考えているからです。


僕は元々構造系の研究室を出ていますので、構造は好きなジャンルです。
とは言っても、就職してからの8年間ほとんど構造計算と言えるような業務をやってきていないので、知識は無いのですが構造系の仕事にいつか就きたいなぁと思っています。

構造設計にも触れている本も以前に紹介していますので、良かったら見てください。
安藤忠雄の光の教会。
あの十字の部分は構造的には結構苦労しているみたいです。

光の教会 安藤忠雄の現場 平松剛

さて、先にぶっちゃけてしまいますが、今回の本は僕にはまだ早かったと言わざるを得ません。笑
とは言っても、構造の難解な数字が羅列してあるわけではなく、文章としてはかなり初心者向きに書いてある内容かと思います。


おそらく構造を専門としている人には比較的簡単に理解できると思います。
序盤の構造システム原論は力学の説明を感覚的で分かりやすく説明されているので、一級建築士で力学が苦手な方には感覚を掴むためにも、この章だけでも読んでおいて損はないかと。

構造家はカッコイイ!

しかし、構造家って本当にカッコいいなぁと改めて尊敬の気持ちが高まりました。
梅沢さんと一緒にIRONHOUSEを手掛けた建築家の椎名さんがこのように語っています。

この建築の最大の見せ場は(中略)フロートガラスを水平に積層し小口を表しにしたトップライトであった。
海底から見上げたような神秘的な光が期待される空間だ。長手のペアウォールの片側は2階部分の一部であるが、もう片方の壁は1階からの片持ちとなり不安定である。
梅沢さんは「これはコンクリートでできた枠と考えればいいのです。積層ガラス越しであれば目立たないので、60Φのロッドを短手方向に2カ所入れ枠の変形を拘束します。そしてコンクリート側壁上部を薄くしてL100×100×6tをそこに隠して回しガラスを載せましょう。」と言った。
自分一人で考えていたときには、どうしたものかと思っていたことが、瞬時に決まってしまったのだ。

本書より引用

この一節を読んだとき
構造技術を持って、建築作品性を向上させている様子にとても心惹かれました。


世間一般では意匠設計者が全ての指揮を取っているように見られがちですが、難しい建築であればあるほど構造がなければ、意匠も進まないと言えるほど重要な役割になります。


それを完全に体現されているのが、この本を読むことで理解できます。

圧倒的な意匠への理解

最初の文章でも少し紹介しましたが、梅沢さんは意匠について非常に理解がある方だと感じます。


他の章でもこのように説明されています。
すみだ生涯学習センター【ユートリヤ】という作品に携わっていた時のことです。

「不整形な敷地に建物を、三つのボリュームに分け、プラザを挟むように配置することで、プラザを敷地周辺の三つの路地に連結させ新たな人の流れをつくろう」というコンセプトで建物は計画が始まります。

これに対し、ブロックごとに耐震要素の配置が制限されるという構造的ビハインドを、2階から4階まで合計9本のブリッジで連結し、三つのブロックが一体となってバランスを獲得する構造計画を考案しました。


この構造計画は三ブロックに機能を分割させ、互いに有機的に結合するという構造形態が建築コンセプトにも合致するようになっています。


本書の言葉を引用しながら書いてますので、ちょっと長い文章になりましたが、要は意匠上のコンセプトを構造でも表現する計画を考えたということです。
意匠設計の人からしたら、これほど頼もしい技術者は居ないですよね。


このように設計はコンセプトが重要です。それに対して構造設計者は意向を汲み取ることが出来なければ、どれだけ意匠上のコンセプトがしっかりしていても構造計画により台無しになりかねません。


構造的に安全であることは当たり前ですが、「構造設計者」という名前である以上、上記のような建築に対する創造力が必要だと思います。

Irony Space IRONHOUSE 

Irony Spaceは梅沢さんの事務所であり、IRONHOUSEは自邸です。


Irony Spaceでは構造家の仕事場にふさわしい「構造躯体のみで建築空間をつくること」というコンセプトから耐候性鋼板を用いて100年以上のメンテナンスフリー建築が実現しました。


この建築はとても面白いです。
大きな鉄板を曲げて、屏風のように立てた空間がアトリエの内部になります。


この工法によって外部仕上げが不要になり、柱・梁すら出てこないという非常に合理的な建築になりました。


内部仕上げも基本はこの鋼板のみです。
建物全体をと通して仕上げは床のフローリングだけという潔さ。


階段も一枚の鉄板を折り込んだような、シンプルが階段になっています。
力学を理解した人間だからできるディテールですね。



IRONHOUSEもアトリエと同様のサンドイッチパネル工法が用いられました。
地階を含む3階建ての建物です。


この住宅は都市型住宅ですが、景観や街並みにも配慮しています。
屋上庭園は自身の屋上だけで楽しむのではなく、段々畑上の人工的地形を設けて周辺住民にも提供しています。


また、外部建具にも外壁で用いられている耐候性鋼板を利用し、経年変化を楽しめるように。
単一の素材にすることで統一感とモノコック構造としての完成度を重視するという徹底ぶり。この選択が建物の完成度をかなり向上させていると思います。

まとめ

この本を読んで、構造設計者への憧れが強くなりました。
正直、今回で理解できた部分は一部でした。。笑
知識がまだまだ足りんでした。


でもめっちゃ良い本でした。
また僕が構造知識を習得したときに読み直したいと思います!!

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