【建築本レビュー】2025年の建築 新しいシゴト② HEAD研究会 フロンティアTF

  • 2019年6月28日
  • 2022年9月25日
  • 建築本
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建築の魅力を伝えるために、色々な仕事をする いしまるあきこ

建築を仕事にしようと思うと設計事務所に属するか、もしくは自分で独立するかという大きな二択しか考えられない人は結構多いんじゃないかな~と思います。
僕がまさにそうでした。
そんな中いしまるあきこさんは、建築を建てない。

建築的「きっかけ」づくりを仕事にされています。

専門として建築に関する仕事もされていますが、それ以外の一般的な仕事も多くされています。
例えば、ラジオ・テレビ番組の企画制作や雑誌編集。
他にも示会やライブ運営のアーティストマネジメントなどなど、かなり広い範囲で活動されています 。

建てることだけが建築士ではないんですね。。

建築の歴史や意義に興味のない人には聞いてもらえない

いしまるさんがこのような広い範囲で活動されるようになったきっかけがあります。

もともといしまるさんは同潤会青山アパートメントの保存再生を考える団体に所属していたそうです。
ですが、声高に保存再生を叫んでも建築に興味のない人には声が届かなかったという経験から、保存運動そのものに限界を感じ、自身で「同潤会記憶アパートメント」という展示会を開催しちゃいます。

同潤会アパートの中で同潤会アパートをテーマにした展示会をひらき、アパートに来てもらう「きっかけ」を作りました。

建築がなくなった後も不思議な展示会をしていたという記憶を残してもらえるようにと考えたものです。
そこから派生して古い建築の活用方法を探す展示イベントへと繋がりました。

僕は興味のない人に対して、アプローチの仕方を考えるというのはとても重要なことだと思っています。
そもそも一般の方にとっては同潤会アパートなんて知らないでしょうし、解体されることに特別な感情は生まれないですよね。

これは悲しいですが、事実です。

今後モダニズム時代につくらてきた建築は、一斉に建て替えというタイミングに来ます。
建築に興味のない人にも、間口を広げて違った視点から興味を持ってもらうというのは建築保存という観点からも重要なテーマかなと思います。

セルフリノベは建築と一般の方をつなぐコミュニケーションツール

いしまるさんは自身の事務所を設立し、セルフリノベーションプロジェクトをスタートさせました。

まずは女子ひとりでどこまでセルフリノベができるかを試す「つくるーむ」というプロジェクトを始動。
ひとりでリノベってかなりハードだと思うのですが、いしまるさんは二年をかけて完成させます。(すげー)

ご自身で二年をかけてセルフリノベをしたことをきっかけにワークショップ「Reプロジェクト」にもつながります。

参加者と一緒にセルフリノベを行ってもらい、誰もが自分で家をリノベーションできること・建築の楽しさを伝えています。
リノベーションは建築分野ですが、セルフリノベは建築と一般の方のその架け橋になるんですね。

高一で飛び込んだ商店街から仕事につながる 木下斉

木下さんの経歴は面白い。

本書の最後にスティーブ・ジョブズの「コテクティング・ザ・ドッツ」の話に触れますが、まさに点と点をつないでいった結果が今の働き方に繋がっているようです。

高校一年生の時に、乙武洋匡さんの「心のバリアフリー」という活動に参加したことが始まります。
その後、乙武さんの本が売れて忙しくなったことをきっかけに運営に携わるようになります。

全国の商店街による共同出資会社を設立

その活動の中で地域活性化のため、地域に限らず全国の商店街による共同出資会社を設立することに。

それで、高校三年生でその会社の社長を引き受けることになったのだそう。

地域活性化という目的ではありますが、立派な会社なので経営をしないといけない。しかも共同出資会社ですから、お金を生み出さなければ出資者からつるし上げられるらしいんです。。
なかなかハードですね。。笑

その中で、木下さんは円形脱毛症になりながら、笑
社会人として、社長として大きく成長してゆきます。

僕はこの話を聞いて、この方のコミットメント力に関心してしまいました。

だって流れの中でたまたま自分が社長になっただけで、円形脱毛症になるんでしょ⁉笑

しかも、課題は全国でもなかなかうまくいっている事例の少ない地域活性化。
僕が同じ高校生の立場だったら、同じようにこの問題に立ち向かえなかったと思います。

行政が公園をつくる時代ではない

この過程の中で「まちづくりに経営を持ち込む」という基本理念ができたといいます。

全米で2000以上の公園をつくったカブームというNPO法人の活動にも参加されました。
海外のまちづくりでは中小都市でも日本よりずっと意識が高く、固定資産税にプラスアルファのお金を地権者が出し合い、よそから人材を集めて活動をしているのだとか。

この活動を通して、もはや行政が公園をつくる時代ではない、
同様に、まちづくりも役所がする時代ではないと強く感じたといいます。

街づくりを事業性のあるものにすることで、ようやく稼げるようになりました。
どんな崇高な思いがあっても、持続可能でなければ志半ばで断念せざるを得ません。
僕個人的にも、まちづくりやボランティアにはまず「事業性」が大切だと思っています。

まとめ

僕がこの本を読んで、まずは自分で考え、行動しようと決心がつきました。

建築という分野は裾野が広くて、自分が思っていたよりも広い範囲で他業種や社会問題と関わりがあるようです。

当初に僕が思っていた、「施主のいる仕事は嫌、だけど建築は好き」って人は結構潜在的にいるんじゃないかと思うんですよね。。
そんな人はぜひこの本を読んでもらいたいと思います。
自分がどのように建築と関わっていけば良いのかが分かると思います。

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