今回は、僕が自邸を設計する際に超絶お世話になった建築本を紹介したいと思います。
【湖畔の山荘設計図集】
こちらは僕が尊敬して止まない中村好文さんの設計図集です。
これだけ著名な方のディテール集を、惜しげもなく公開して頂けて本当に感謝感激です。
これから自邸を建てる人には早い段階でこの本を読んでおく事をおススメします。
今までディテールの本なんて買う事なんてなかった僕ですが、今回は自邸でどうしても買わないといけない事情ができて遅ればせながらに購入。
「もう少し早く入手しておきたかった」と後悔した今日この頃です。
この書籍はタイトル通り、設計図集です。
そのため基本的には分厚い本にギッシリと図面が添付されていますから、まぁ一般の方が手を伸ばすことはないでしょう。。
そのためどうしても設計者目線での建築本レビューになりますが、ご了承ください。
それでは早速行ってみましょう!!
建築家の設計のプロセスを追える
本書の序盤では【湖畔の山荘】の初期プラン(A案)から最終プラン(I 案)までの全9案が全て記載されています。
建築家の本には最終の詳細図や設計手法が載っている本は多いのですが、意外とこのような設計プロセスを可視化できる本は少ないように思います。
建築家の先生の元でその手法を知る環境にない設計者(僕のようなハウスメーカーや工務店設計者)にはとても良い参考書になると思っています。
このエスキースを辿っていくと分かりますが、初期プランは平屋建てなんですよね。。
結果として寝室と客間との距離感、無駄に感じてしまう廊下がネックとなり、2階建てを検討していくことになります。
また、キッチンやお風呂の大きさなんかも、中村さんが料理上手のクライアントを想像しながら「小さいのではないか」などと模索している様が見て取れます。
ちなみにお客さんに初期提示したのはH案。
実に初回プレゼンテーションまでに8案も考えていたという事になります。
(I案で最終決定なので一回だけプランを変更したことになりますが、初期に考え尽くされているからこそその後の大きな軌道修正がないという点も勉強になります。)
中村さんがお施主様の気持ちに寄り添った、優しく誠実な設計をされていることがビンビンと伝わってきます。
細かい寸法を丸パクリできる
冒頭でも少し話しましたが、僕はこの本をどうしても買わないといけない状態に陥りました。
それは自邸で木製サッシを使いたかったんですが、納まりが全然わからなかった事。笑
だから詳細を書く段階になって、急いで本屋さんでディテール集を読み漁るという行為を行っていたワケです。
結果的にはサッシ意外にも様々な納まりを参照出来てよかったです。
例えば、建具一つとっても高さがいくつなのか、幅がいくつなのか、戸袋の大きさはいくらなのかと詳細図を描けば描くほど、自分の設定した寸法が本当に問題ないのかと心配になってきます。
そんな時に、詳細を参照出来れば安心して数値設定をすることができます。
誤解がないようにお伝えしますがこのような参考資料以上に、実際自分が経験した感覚値の方が信頼できる数字なのですが、初めての設計をする際には結構有効だと思っています。
以前の記事でもまとめましたが、建築はパクリがある程度許された世界です。
自分よりも経験値が圧倒的に高い建築家が試行錯誤を繰り返して設定した寸法には、本質が含まれていると思います。
心地良さを寸法から熟考できる
現場見学に行った時になぜこの建築は心地よいと感じるのだろうと思うことが多くあります。
このような心地よさは言語化しにくく、ある程度感覚値として理解せざるを得ません。
実際にこの住宅に行けることが望ましいですが、何せ住宅とは個人の資産。
勉強のためだからとやすやすと見せてもらえるようなものではありません。
見れたとしても、詳細図ほどの細かい採寸も出来ませんよね。
しかしながら、このような詳細図を丁寧に読み解いていくと、何が美しいのか、何が心地よいのかを少しだけ想像することができます。
「なんか分かっている感」みたいなものが出てる言い回しになって申し訳ないのですが、それでもこのような設計図集から住宅の本質を学べることが多くあると思っています。
こういった感覚は自分でめちゃくちゃ読み込まないといけないので、立ち読みではなかなか知ることができません。
寸法を何度も読み込んでいくことで分かるものだと思っています。そして建築ができた時に再度自分の肌感覚で体験しに行けると良いですね。
まとめ
以上、いかがだったでしょうか。
設計図集なので要約はできませんが、中村さんの丁寧な仕事ぶりを肌で感じることができる書籍になっていると思います。
今後も設計で寸法に迷った際は、この本を読み返すことになると思います。
自分にとってバイブルになるくらい情報量がたくさん詰まった設計図集でした。
もし書店で見かけたら、手に取って見てほしい一冊です。
最後まで読んで頂きありがとうございます。それではまた。