自分の仕事をつくる 西村佳哲【建築本レビュー】


今回の建築本は【自分の仕事をつくる】です。


様々なデザイナーの「働き方」について著者が実際にサンフランシスコや帯広やカリフォルニアに訪問し、インタビューしてまとめたものです。


以前レビューした
「2025年の建築新しいシゴト」紹介されていた本だったので、前から気になっていたのですがやっと読むことができました。

2025年の建築新しいシゴト ① HEAD研究会 フロンティアTF


インタビューしたデザイナーは建築に限らず、
・パン屋さん
・シェイパー(サーフィンのサーフボードを作る人)
・プラモデル製作会社

など多岐に渡ります。


さて、この本の著者は西村佳哲さん。
元々ゼネコンで働かれていて、その傍らで自身でフリーペーパーを作っていたそうです。


その後、会社を辞め、編集者としてデザイナーの働き方を紹介する連載「レッツワーク」を手がけるようになります。


その連載をベースに再編したのが本書です。


そもそも西村さん本人が仕事の傍ら、自身のフリーペーパーを発行しているくらいなので、働くという行為そのものを自発的に考え、自分事として捉えられる方なのではないかと思います。


12人へのインタビューが収録されている本書の中から3つをご紹介したいと思います!!


それでは早速行ってみましょう!!

設計事務所 象設計集団

おすけ
象設計集団は建築業界ではとっても有名な設計事務所ですね。


僕は知らなかったのですが、事務所の拠点が帯広と東京にあるらしいです。
そして帯広では廃校となった小学校をアトリエとして使用しています。

・小学校なので校庭でサッカーが出来たり、
・食事は給食室でまかなったり、
・体育館は地域の人が集まる集会所になったり

と至れり尽くせり。。笑


しかも家賃は3万円くらいみたいです。
こう思うと、小学校ってオフィスとして万能ですよね。笑

象設計ではインタビュー当時、高齢者施設を手がけていたようです。
そのプロジェクトの進め方が、僕の会社とあまりにも違うのでとても印象に残りました。

いまはエスキースを詰めている段階ですが、ここにいたるまでに高齢者関連の勉強を相当量重ねてきました。(中略)プロジェクトがはじまって最初の三か月ほどは、手はあまり動かさず、勉強に集中しました。そしてまずは五一カ所の施設を実際に見に行くことを決め、北欧から国内まで、興味を持ったところはだいたい見学し、実際に体験もしてきました。

本書より引用

そうしているうちにだんだん何をするべきなのか、何が問題なのか、自分たちに何ができるのかが細かいところまで見えてくる。
この勉強の段階が非常に面白い。

本書より引用

と紹介されています。

自分の仕事と対比したときに、【これほどまでにリサーチや勉強に時間と労力を割けるか】と問われると返答に困ってしまいます。


ですが、これほど勉強を重ねなければ建築というものの完成度が上がっていかない理由も理解できます。


設計のプロである設計事務所であっても、今回のような高齢者施設で、働き方・動線・設備などを熟知している設計者は少ないと思います。

その都度、勉強を重ねクライアントの要望に応えていかなくてはいけない。
よって勉強は必須で、そのためのリサーチには相当な時間が必要になります。

このような手間を惜しまない仕事が可能なのは、先ほど述べた通り仕事場を帯広に移し、東京にはない金銭的なアドバンテージがあるからです。


ビジネスの側面から言えば維持費以上に、事業を回し利益を生まなければいけないのは当たり前のことです。
その維持費を抑えることで、結果として時間を生み出していることになります。

維持費が下がる
→目先の利益を追わずに経営できる
→時間的余裕が生まれるというスパイラルです。


現代のスピード感を少し緩和させる工夫とも言えるでしょうか。
この考え方は非常に合理的だと感じました。

パン屋 ルヴァン


甲田さんがパン屋で働くようになったのは、32歳からです。
それまでは定職を持たずに、いろいろな仕事や旅をして生活されていたそうです。

パン屋で働くようになったのも、知り合いのお兄さんが経営するパン屋さんで、
変わったパンを焼いているブッシュさんというフランス人に興味を持ち、手伝うことになったことが発端です。

色々な仕事を経験した甲田さんにとって「矛盾がなかった」と言います。

そのパンは自分でつくっていて気持ちがいいし、人にもすごく喜んでもらえる。素材だってカラダにいいものしか入っていない。とにかく全体的に矛盾が感じられなかったんです。

本書より抜粋


甲田さんが提供しているのはパンですが、パンそのものが目的ではなくもっと先にある人々の喜びを見据えて仕事をされています。

パンは手段であって、気持ちよさだとかやすらぎだとか、平和的なことを売っていく。売っていくというか、パンを通じていろんなつながりを持ちたいというのが、基本にあるんだと思います。

本書より抜粋

僕はこの矛盾がなかったというフレーズにかなり共感できました。
多くの方が仕事に対して不満を感じるのは、仕事のハードさや金銭面、社会的な地位ではないように思うからです。

仕事の不満とはやはり根底にある、「矛盾を感じる」という気持ちなのではないかと思うワケです。


これは少し前に僕も仕事について悩んでいたことがあって、似たようなことを考えていたんです。
それは「自分の言っていることと、やっていることがズレていなければその仕事は最高に楽しいのではないか」という考えです。


これに近いことを綺麗な文章でまとめてくれていて、自分の考えがかなり整理されました。


僕たちも家という箱は手段であり、それよりもその先の豊かな生活に意識を向けないといけないんですね。。
(もちろん箱としての耐震性も大事ですが笑 )

プラモデルメーカー ファインモールド


次はプラモデル製作を手掛けるファインモールドです。
小さなプラモデルメーカーですが、ヒット商品を輩出しています。
そのひとつが「紅の豚」の主人公ポルコが乗っている飛行艇「飛行艇・サボイア S.21」のプラモデルです。

ここでも先ほどのパンづくりと似たような一節があります。

プラモデルの価値は、モノではなく、それをつくり上げる過程の豊かさにある。箱の中に入っているのはプラスティックの部品ではなく、それを形にする小さな旅だ。

本書より抜粋


このサボイアを担当した神谷さんは、いかにも空を飛びそうなサボイアを作ることをこのプロジェクトの大前提に据えました。


この飛行艇はアニメの話です。
当たり前ですが実際に現物が存在する飛行艇ではないんですよね。
ですが、アニメを立体化しただけの、実際には飛びそうにもない模型を作ることはしなかったそうです。


ここで面白いのが、神谷さんは実際の飛行機の設計と同じようなプロセスでイゾッタ・フランスキーニ/600馬力というエンジンの資料から探し始めたそうです。


更には同型のエンジンが三菱重工でライセンス製造されていたことを突き止め、全寸図面や取扱説明書の写しまで入手する徹底ぶり。
突き詰め方が変態的で僕は大好きです!!笑


エンジンが決まった後は、空気力学的なバランスをもとに期待の全長・横幅を割り出していきました。
その後、宮崎監督を訪問して指示を受け、プラモモデルの設計が完了しました。

この熱量には本当に脱帽です。


なぜこれほどまでにプラモデルに圧倒的な作業量を傾けられるのかという問いに最後答えてくれています。

そもそも模型なんて生活必需品ではない。ぼくらのような仕事がなくなったところで、誰も困りはしないでしょう。
だからこそ、つくる側が楽しんでなかったら嘘ですよね。
最初から遊びの世界なんだから、馬鹿みたいに思いっきりこだわった仕事をした方がいいと思うんです。

本書より抜粋


この熱量がきっと消費者にも伝わったのでしょう。。


最後に、著者の西村さんの言葉も添えられています。

模型はたしかに生活必需品ではない。
しかし絶対的に必要とされ、その意義があらかじめ約束されているものなど、この世の中にどれほどあるだろう。
たとえば花を生けるということは生活において必需ではない。
が、それを意味がないということに意味はなく、花の価値も、結局のところはそれを「つくりたい」という純粋な気持ちの品質にかかっているのではないか。

本書より抜粋


まさにその通りだと思います。
生け花の例えは非常に分かりやすく、すっと腑に落ちました。

まとめ


仕事の忙しさや制約を理由に、「このくらいでいいや」というような思考になってしまっていたことに気づかされました。

この本で出てくる人たちはモノづくりという分野に対してまっすぐに向き合っていました。
昔 僕がかっこいい大人だと思っていた、モノづくりのプロたちの生き方を学べた気がします
!!


最後にハッとしたエピソードがあったので紹介しておきます。
イタリア帰りの友人とのお話です。


イタリアの友人を訪ね、帰る時間になり、今度また会おうという話になったそうです。

日本人
今度休みをもらえるのは・・・
イタリア人
休みをもらうって、誰から?


と真顔で聞き返したというエピソードです。


日本独特なのかも知れませんが、僕も同じような言葉を口にしたことがあります。

・休みとは誰のものなのか、
・会社からもらうものなのか、
僕たちは自分の全ての時間を会社に預けてしまっているような価値観が根底にあるのではないでしょうか?


何が正しいのかという話ではありませんが、少し考えさせられる一節でした。


以上【自分の仕事をつくる】の建築本レビューでした。

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